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『K -ALL CHARACTERS-』

2016年4月30日発売予定『K -ALL CHARACTERS-』より、本編の一部をホームページ限定で先行公開!


・「2014年1月5日 夜刀神狗朗」

 年末の大掃除は完璧だった。シロ、ネコと共に住んでいる一室だけではなく、学生寮に住んでいる他の学生や自治委員会などと連携して寮全体をピカピカに磨き上げた。彼ら白銀クランはクリスマスイブに惨敗とも言える敗北を緑のクランに喫した。赤のクラン、青のクランと同盟を組み、万全の体制で守備を整えたのに比水流とその一党に翻弄されたあげく、石盤を奪われたのだ。

 その状態から考えるとクロの立ち直りの早さ、切り替えの良さは驚嘆するべきことなのかもしれない。だが、それには理由があった。彼の主である伊佐那社がそのような意思決定をしたのだ。メンタルが決して強い、とは言えないシロだったが、敗北後、二、三日で気持ちを一新させ、緑のクランに奪われた石盤をなんとかするべく研究を開始した。だとしたらクロとしても落ち込んでいる理由などどこにもない。シロが気持ちよく仕事に没頭できるよう環境作りをするのが彼の役割だった。

 そしておせち料理まで完璧に作り上げて、お正月をシロとネコと迎えた。正月はさすがにシロも作業を一時棚上げし、仲間たちとリラックスして過ごした。みんなで学園島内にある神社に初詣にいったし、中庭ではねつきもたこ揚げもした。正月中は帰省している学生がほとんどで寮内は貸し切りみたいな状態だった。室内では福笑いに双六などこれでもか、というくらいお正月を満喫した。

 クロにとってなにより嬉しかったのは、その一つ一つが自分にとっては馴染みの行事であっても、シロにとってもネコにとっても全くの初めての体験で、彼らが和風な正月を驚きを持って共有し、とても喜んでくれたことだった。

 シロとネコと仲間として時を刻んでいける、そういう経験を重ねていける、というのはクロにとっては希望を感じさせる出来事だった。

 元旦だけ休んでから、シロはすぐに石盤の究明に戻った。姉であるクローディアの遺稿をよすがに数式に没頭する。クロは炊事掃除洗濯に徹し、ネコでさえなるべくシロの邪魔をしないようにと心がけていた。

 そしてある日の夕刻、買い物から帰ったクロは外から寮を眺めた。まだ学生たちは帰省から戻っていないので、寮は静謐なままだった。明かりも自分たちの部屋がぽつんと灯っているのみである。そのことに安らぎと一抹のさみしさを覚える。クロが部屋に戻ったその時、

「おかえりー!」

「たんじょうびおめでとう!」

 突然、クラッカーの音と共にシロとネコが大きな声を上げた。見るといつの間にやったのか壁には手製の飾り付けが。

 テーブルには大きなケーキとカラフルなプレゼントの箱も。

「……」

 しばし無言だったクロがゆっくりと言った。

「気づいていたのか? 今日が俺の誕生日だということに」

「もちろん」

 にやっとシロが笑う。クロは思い出す。

(そうか。こいつはなんやかやで抜け目のない奴だったな)

 それからシロとネコがじいっと自分を注視していることに気がつき、

「あー、こっほん」

 咳払いし、赤面してから言った。

「ありがとう。祝って貰えて感謝する」

 シロが手を打って喜び、ネコが飛びついてきた。クロは照れながらもつい口元を緩ませてしまった。その日、だいぶ遅くまでシロたちの部屋の明かりは付いていて、石盤の研究は一日だけ遅れた。

 

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